NTTドコモの「フリーコース」が開始されたのは、2016年6月1日です。
二年更新の更新期間にのみ選択することができるフリーコースですが、既に一年以上を経過した現在、利用している人がどれだけいるのか、かなり気になるところです。
何故なら、考えれば考えるほどフリーコースは、実はほとんど意味がないプランであるということが分かってくるためです。
フリーコースに変更してドコモの解約金がかからないようにするのはいいとして、ずっとドコモ割が適用しなくなったり、更新ありがとうポイントがもらえなくなったりと、フリーコースを選択してドコモを継続する意味が、ほとんどないためです。
そのため、「更新期間にわざわざフリーコースにするくらいなら、そのタイミングでドコモから他社にMNP転出すればいい」という話でもあるわけです。
そうなると、フリーコースの存在意義が極めて微妙になります。
しかしフリーコースには一つだけ、ユーザーに対してメリットをもたらす使い方が存在します。
実際のところどうなのか、その内容について検証解説していきます。
関連記事:「ずっとドコモ割/フリーコース/更新ありがとうポイントのメリットデメリットまとめ」
ドコモのフリーコースは「ドコモさん今までありがとう、さようなら」コース
ドコモのフリーコースを言い換えると、つまりこういうことです。
「フリーコース」は「ドコモさん今までありがとう、さようなら」コースです。
フリーコースに変更し、二年縛りの呪縛から逃れることで、いつでもドコモから飛び立てる準備ができたわけです。飛び立って降り立つ目的地はauでもソフトバンクでも、格安SIMでもOKです。自由の身です。
しかしここで焦ってはいけません。すぐに飛び立つと失敗する可能性があります。
就職していつでも独立できるけれども、親元である実家にしばらく残る人もいると思います。そんなイメージで考えるとどうでしょうか。
既に職を持ち経済力を身に着けたことでいつでも外に出ることができるけれども、慌てずに最適なタイミングを見計らっている状態です。
フリーコースもまったく同じです。
では、慌てて飛び出して失敗する可能性があるケースとはどういうケースなのかというと、割賦残金と月々サポートが残っているケースです。
ドコモの解約更新月と割賦および月々サポートが終了する月は必ずしも一致しません。そのため、ようやく解約金がかからない更新期間に入ったと思っても、まだあと数ヶ月~1年以上割賦残金が残っているということもあるわけです。
しかしその場合、割賦が終了するまで待つと更新期間が終了してしまい、また改めて二年間縛られてしまうというジレンマが今まで存在したわけです。
そのジレンマを解決してくれるのが、フリーコースです。
そしてフリーコースが唯一最大の利用価値を発揮するのも、このケースです。
つまり、まず二年縛りが終了し契約更新期間に入ったら、すぐにフリーコースに変更します。
そうすれば、あとはいつ解約しても解約金がかからなくなります。仮に割賦残金と月々サポートが残っていても、端末購入サポートの規定利用期間を満たしていなくても、ゆっくりと割賦が終了する月まで、または端末購入サポートの規定利用期間を満たすまで待つことができます。
そして晴れて条件を満たしたなら、ドコモから解約金なしで他社へと飛び出せばいいのです。
ただし、この内容に関しては、飛び出す先がもし格安SIMの場合には、よくよく考えるべき注意点があります。この記事の最後に解説します。
フリーコースを選ぶことによるデメリット
ただ、フリーコースにももちろんデメリットが存在します。
それはドコモを長期利用しているカケホーダイプラン利用ユーザーの、パケットパックに対して適用される「ずっとドコモ割」が適用しないという点です。
ただし逆に言えば、以下のユーザーにはこのデメリットは存在しません。
・カケホーダイプランを利用していない(タイプXiにねん/FOMAプラン等を利用している)
・カケホーダイプランを利用しているがパケットパックを利用していない
・ドコモの利用期間が短く、そもそもずっとドコモ割が適用しない
この条件に当てはまるユーザーは、後述する「更新ありがとうポイント」がもらえないという点を除けばフリーコースにすることによるデメリットはなく、比較的安心して変更することができます。
この「ずっとドコモ割」が適用しないことによる影響を最も受けるのは、15年以上ドコモを利用しており、パケットパックも大容量を利用している、ずっとドコモ割の還元が最も大きいユーザーです。
問題はシェアパック子回線の場合
おそらくフリーコースを選ぶ場合に最も問題になるのは、シェアパックの子回線の場合です。
何故なら、シェアパックの代表回線がフリーコースを選択していない場合、つまりずっとドコモ割が適用されている場合、シェアパック子回線は更新期間になったとしてもフリーコースに変更することができません。
つまり代表回線にずっとドコモ割が適用されているため、フリーコース適用の条件を満たさないことになってしまうわけです。
この場合どうすればいいのかというと、一つは代表回線もフリーコースに変更することです。ただ、この方法は代表回線も契約更新期間でなければフリーコースに変えられないので、なかなかハードルが高いです。
もう一つの方法としては、シェアグループから抜けて単独になることです。
この方法は簡単なのですが、当然シェアオプション500円で済んでいたパケット定額料金が単独になることによってデータSパックでも3500円、データMパックなら5000円と、それぞれ7倍、10倍になってしまうので、長期間そのままでいることはデメリットにしかなりません。解約金分の料金を数ヶ月で消化してしまうため、フリーコースのメリットはほぼ失われます。
もしこの方法を選択する場合には、どのタイミングでドコモから出るかをしっかり考えて計算しておかないと、逆に損をしてしまいます。
フリーコースでは更新ありがとうポイントがもらえない
もう一つ、フリーコースのデメリットとして、更新ありがとうポイントがもらえない、という点があります。
更新ありがとうポイントとは、dポイント3000円分、期間・用途限定のポイントとなっています。通常のdポイントとは違うものの、機種変更時やdポイント加盟店での利用などはできるため、ある程度通常に近い利用ができます。
利用期間および取得期間が短く、次の二年の契約期間開始から6ヶ月間となっているため、利用可能期間は最大で6ヶ月です。
自動付与ではなく自分で取得しなければならないというのも落とし穴の一つで、「更新ありがとう」と言いながら、なかなかユーザー側に負担を強いるポイントシステムでもあります。
この更新ありがとうポイントがフリーコースではもらえないため、フリーコースを選択すると若干損をした気分にはなるかもしれませんが、ドコモから脱出すれば格安の世界が待っているので、あまり惜しいと思わなくてもいいでしょう。
関連記事:「更新ありがとうポイントをもらう方法」
よくよく考えるとやっぱりフリーコースはお得ではない?
ここまでの内容で、つまりフリーコースの活用意義としては、解約金がかからない更新期間と割賦終了時期がずれてしまっている場合に有効活用できる、という話なわけですが、しかしもう一歩、よくよく考える必要があります。
仮に割賦終了まであと半年残っているとします。そのためフリーコースを選択し、割賦終了後にドコモ脱出を考えたとします。
しかしその場合も、半年間はドコモの基本料金等が通常通りかかるわけです。
仮にドコモの月額料金が8000円だとします。しかし脱出先が格安SIMの場合、仮にLINEモバイルの音声対応SIMのコミュニケーションフリープラン3GBコースを選んだとして、月額料金は1690円です。そのままドコモスマホを利用するなら端末代金もかからないため、月あたり6000円以上安くなる計算です。
仮に月々サポートがなくなり、端末代金が残ったとしても、合計金額が月あたり5000円を超えることはあまりないでしょう。
とすると、半年先までドコモのままで待つ方が料金的には不利になってしまいます。
つまり、フリーコースの意味が完全に失われます。
格安SIMへの乗り換えならフリーコースは考えるだけ無駄
ここまでいろいろ書いてきておいて、元も子もないことを書くようですが、もし乗り換え先が格安SIMであるのなら、結論としてフリーコースは考えるだけ無駄である可能性大です。
仮に月々サポートが終了したとしても、残った割賦残金とMVNO利用時の料金の合計が現時点での料金を下回るのであれば、待つだけ無駄です。早めに動いた方が確実にお得です。
そして一般ユーザーがこのややこしい計算をわざわざすること自体、なかなか困難です。
性格にもよると思いますが、私なら考えるのが面倒になって解約金がかからない月なら即行動します。割賦残金はそのまま支払えばいいのです。仮に解約金がかかったとしても、安くなるのなら早く動くべきとも言えます。解約金がかからない月があと数ヶ月でやってくる、というのなら待つ意味はありますが、半年以上先、ということなら解約金がかかったとしても急いだほうが得です。
それほどMVNO利用時とドコモの料金には差があります。
ただし、乗り換え検討先がauやソフトバンクであるのなら、一旦フリーコースを選択して割賦終了まで待ち、それから転出するという方法はありだと思います。
フリーコースの正体は「ドコモ残留期間を延ばすための仕組み」
ドコモが設定したフリーコースは結局、あまり利用されることはないけれども、もし利用するとしたら「ドコモに残留させる期間を少しでも長くする」ための仕組みとしてのみ、機能していると言っていいと思います。
ドコモがそれを意図するしないにかかわらず、いずれにしてもそういう形になってしまっているのです。
どちらにしても解約更新月に解約するはずだったユーザーに対して、割賦終了までの猶予期間を与えることにより、自動的にドコモ残留が伸びる、という仕組みです。
ユーザーにとってのメリットは、ここまで書いてきた通り、なかなか見出すのが難しいプランでもあります。
だからこその利用者の少なさ、知名度のなさでもあるのかなと思います。実際、ドコモでフリーコースを勧められた、という話はほとんど聞きません。
もしかしたらショップ店員の方々もその存在を忘れてしまっているのかもしれません。
私があえて掘り返したフリーコースの話題ではあるのですが、ユーザーの皆様も、フリーコースのことはこれを最後に、胸の奥底にそっとしまっておきましょう。