前回、ドコモのARROWSについて、2012年夏モデル・Dシリーズまで振り返りました。→「歴代ARROWSを振り返る・Dシリーズまで」
今回はその続きとして、2012年冬モデルであるEシリーズから2018年夏モデル・arrows Be F-04Kまで確認していこうと思います。
お気づきの人もいるかと思いますが、富士通のアローズは、「ARROWS」と「arrows」で、表記を使い分ける必要があります。
これは、途中で大文字から小文字のarrowsに切り替わったためで、基本的に小文字で「arrows」と表記してあれば、Hシリーズ以降のアローズのことなんだと、すぐにわかります。
当ブログでも意識してこの辺りは使い分けています。そのため前回のDシリーズまでのARROWSはすべて大文字、今回も途中までは大文字のARROWSで、2015-2016年冬春モデルHシリーズからが小文字arrowsに切り替わっています。
そのあたりも踏まえながら、改めてアローズの歴史を振り返ってみようと思います。
変わりつつあったARROWS
正直な話、DシリーズまでのARROWSは、お世辞にも「いい機種だった」とは言いにくい機種ばかりでした。
次こそは、次こそはとARROWSを選び続けたユーザーもさすがに疲れはじめ、自然とXperiaやGalaxy、AQUOSなどへと移っていくことになった人も多数いると思います。そして自然な流れとして、ARROWSを利用したユーザーに、「ARROWSは地雷」と考えられはじめていました。
しかしそんなARROWSが「今度こそ本当に変わったかも?」と思わせてくれるようになったのは、Eシリーズ後半からでした。
2012年11月25日 | ARROWS V | F-04E | NVIDIA Tegra 3搭載 ROM64GBの大容量機種 |
2012年12月21日 | ARROWS Kiss | F-03E | デュアルコアCPU搭載 おくだけ充電対応 |
2013年2月22日 | ARROWS X | F-02E | NVIDIA Tegra 3搭載 Android4.1搭載 約5.0インチディスプレイ |
2013年6月7日 | ARROWS NX | F-06E | Snapdragon 600搭載 フルセグ対応 3020mAh大容量バッテリー バッテリー取り外し不可 |
Tegra3からSnapdragonへ
この当時のARROWSの大きな特徴の一つが、他メーカーが軒並みCPUにクアルコムのSnapdragonを採用していたにもかかわらず、ARROWSは唯一、NVIDIA Tegra3を採用していたという点です。
それが悪かったというわけでもないのでしょうが、それにしてもARROWSは電池の減りが早いとも言われ続けていたこともあり、CPUがTegra3だからじゃないか、と思われたりもしていたようです。
事実がどうだったのか詳細はわかりませんが、F-06EからようやくTegra3から離れてSnapdragonが採用されるようになり、ちょうどそのあたりの機種から安心して使えるようになったイメージがあるのは間違いありません。
以後、ARROWSは、現在に至るまでずっとSnapdragonを採用し続けています。
F-04EからF-06Eへの変化
ARROWS V F-04EとARROWS X F-02Eは同じ冬モデルではあるのですが、型式としては若いF-02Eの方が約三ヶ月ほど遅れて発売されています。
F-04Eが4.7インチ、F-02Eが5.0インチと、どんどんディスプレイの大型化が進んでいる最中で、F-02EはARROWSとしては初の5インチ越えのスマートフォンでした。
この2機種についてもまだまだこれまでの汚名返上と言えるほどではなく、やはり引き続き発熱や不具合なども他社メーカー製と比べると多かった印象ですね。ただそれでも、今までが今までだったので、「あれ、少しARROWS変わってきたかな」というARROWSに対する印象の変化が起こり始めていたような記憶があります。
その印象がより強まってきて、ARROWSを選んでみてもいいかもしれない、と思い始めることができたのが、F-06Eが最初でした。前述したとおりそれは、たまたまかもしれませんが、ARROWSがNVIDIAからクアルコムへとついにチップセットを切り替えたタイミングでした。
F-06Eはディスプレイサイズが約5.2インチと今までのARROWSで最大となり、その分重量もF-02Eの157gから163gとさらに重くなっていました。バッテリー容量もついに3000mAhを超えた大容量へと進化しました。
ARROWS初のXiスマートフォンF-05Dは1400mAh、F-02EとF-04Eは同じ電池パックを搭載しており2420mAhだったことを考えると、F-06Eの電池容量3020mAhはかなりの増加といえます。その分スマートフォン最大の課題でもあった電池の持ちも、昔と比べればずいぶん改善したと感じられたものです。
バッテリー容量としては、現在も3000mAh前後のものが主流なので、F-06Eでようやく現在の水準になってきたというわけですね。
電池脱着不可モデルの登場
そしてF-06Eにおいて大きく変わったのが、バッテリーの取り外しが不可となった点です。F-06Eは、ARROWSとしては初めてのバッテリー内蔵型スマートフォンにあたります。
それまでは、ケータイやスマホと言えばリアケースの脱着が可能であり、その上で電池パックの取り外しをすることができるというのが長く常識でした。SIMカードの挿入部分はその電池を取り外した裏についているものがほとんどでもあったわけです。
F-06Eは電池の取り外しができないために電池交換を自分で実施することができず、当初「電池が消耗してくるたびにドコモショップで預かり修理に出さなければいけないなんて面倒だ」という意見もかなりありました。実際、電池内蔵タイプではなく、電池脱着可能な機種を選んだ、という人もまだまだ多かったと思います。今では逆にiPhoneはじめほとんどのスマホが電池内蔵型なので、もはや電池脱着型がいい、という選択肢自体がないのですが。
SIMカードやSDカードの挿入口もこれ以降はスマホの上部やサイド部分に取り付けられることが主流になっていきます。
安定しはじめたARROWS
個人的に、完全にARROWSが安定し始めたのは、F-01Fからだと思っています。もちろん、一定の不具合等はこの頃にもあったとは思いますが、以前のようなひどいものはあまり見られなくなってきたような印象でした。
F-01Fは個人的にしばらく利用したことがありますが、かなり安定して利用できていました。特に大きな不具合もなかったですし、使いやすいスマートフォンだと思っていました。
2013年10月24日 | ARROWS NX | F-01F | 約5.0インチディスプレイ WhiteMagic採用 |
2014年5月30日 | ARROWS NX | F-05F | Super ATOK ULTIAS搭載 約5.0インチディスプレイ |
2014年11月19日 | ARROWS NX | F-02G | 約5.2インチディスプレイ 3500mAhバッテリー |
2015年5月28日 | ARROWS NX | F-04G | 虹彩認証搭載 Android5.0 |
2013年冬から2015年夏までの間に発売されたARROWSは、すべてARROWS NXとフラッグシップモデルばかりでARROWS Kissのようなエントリーモデルは発売されていません。
ドコモ全体として各メーカー一台ずつ、たまにSONYが小型モデルを販売するというような流れでもありました。
充実のARROWS・Fシリーズ
F-01FはF-06Eの後継機種ではあるのですが、ディスプレイサイズはやや縮小し5インチへと戻り、今でも主流の5インチ前後がスマートフォンの標準サイズになってきていました。
F-01FはF-06Eよりも重量も軽くなっており、背面が丸みを帯びた形をしており、F-06Eと比べると格段に持ちやすくなっていました。
そのため女性でも扱いやすく、人気もありました。
ディスプレイにはWhiteMagicという新しい技術が採用されており、明るさと同時に省電力を実現していました。バッテリーは引き続き内蔵型でしたが、電池の持ちはかなりよくなってきていました。
ただ、若干白味を帯びたディスプレイが好みを分けたかな、と思います。そのさらに後継のF-05Fではその白味を帯びたディスプレイがかなり改善されており、明るく非常に見やすい美しいディスプレイへと進化しました。
さらにF-05Fでは、「ATOK」のパワーアップ版である「Super ATOK ULTIAS」が採用され、文字入力に関しては他の追随を許さないほど充実した内容となりました。
私は個人的に通常版のATOKをGoogle playで購入して利用していますが、Super ATOK ULTIASはそれよりもさらに便利な仕組みを多数備えています。
このF-05FをもってARROWSは、一つの完成形を見たのではないかと思っています。
虹彩認証のスタート
ここから先は、本当に少しずつ、少しずつの進化になっていきます。逆に言えば、F-05Fをまだ仮に利用している場合、そう問題なくまだまだ現役で利用できます。
F-02Gでは八角形の筐体が特徴的でしたが、5.2インチあり重量も160gを超えていたのでずっしり重みのあるところなどがどちらかというと男性向けでした。
F-04Gでは逆にデザインがかなりスタイリッシュに変化し、SONYのXperiaに少し似てきた印象でした。
さらにここで、それまで長く富士通が採用してきた指紋認証ではなく、世界初の虹彩認証が採用されました。
iPhone XにおいてFACE IDが採用されましたが、「顔」ではなく瞳の「虹彩」を利用して認証する点が特徴的かつ先進的でした。→「ドコモ・iPhone X/iPhone 8購入準備を始めてみる」
以後、ARROWSのフラッグシップモデルでは歴代虹彩認証は採用されています。
関連記事:「F-04G/F-02Hの虹彩認証を使ってみる」
「ARROWS」から「arrows」へ
それまでARROWSシリーズは、ずっと大文字で「ARROWS」だったのですが、2015年に発売されたHシリーズを境に、小文字の「arrows」へと生まれ変わりました。
同時に、「arrows」ではもはや過去の「ARROWS」の悪いイメージは、まったく感じることができません。
日本においてはAndroidスマートフォンがiPhoneに押される中、arrowsはAndroid機種をXperiaとともに牽引し、また、新しくSIMフリースマートフォンの世界でも輝きを増しています。
2015年10月7日 | arrows Fit | F-01H | 耐衝撃性能搭載 指紋認証搭載 廉価なエントリーモデル |
2015年12月4日 | arrows NX | F-02H | 虹彩認証搭載 耐衝撃性能あり |
2016年7月6日 | arrows SV | F-03H | arrows Fitの後継モデル |
2016年12月2日 | arrows NX | F-01J | 虹彩認証搭載 Android6.0 |
2017年6月1日 | arrows Be | F-05J | arrows SVの後継モデル |
Hシリーズ以降のスマートフォンは、完全に安定期に入った感があり、どの機種を選んでもある程度問題なく使えるため、安心して選択できるようになりました。
arrowsシリーズはフラッグシップモデルである「NX」と、「Fit/SV/Be」のエントリーモデルとに分かれ、2016年からはドコモにおける機種販売の年間サイクルが採用されるようになったことで、フラッグシップモデルとエントリーモデルが交互に発売されるようになっています。ゆえに、それぞれ一年に一機種発売されているイメージです。
そのため、2017-2018年冬春モデルでは順番通りarrows NX F-01Jの後継機種としてフラッグシップモデル・arrows NX F-01Kが発売されました。
次の2018年夏には、arrows Beの後継機の発売が期待されます。
arrows NX F-02Hを利用してみて
最近のarrowsシリーズでは、F-02Hを所有していますが、耐衝撃性能を有しているため、よく落としたりぶつけたりしがちな子供向けのスマホとして利用しています。
ただ、F-02Hは虹彩認証を利用すると電池の減りが早く、虹彩認証を利用しなくても電池容量の割にはスマホの利用自体が多いとあまり電池が持たないなぁという印象でした。
実使用時間(電池持ち時間)はカタログ上は約99.6時間とされています。実際に通常利用においてそんなに持つことはないのですが、90時間を超えた表記のある機種であれば体感として通常は比較的持ちがいいと感じるレベルかなと考えていますが、F-02Hはその印象よりも減るのが確実に早かったです。
これは様々なところで言われていることでもあるので、この機種の注意点と言ってもいいでしょう。
ちなみにこの弱点は、次のフラッグシップモデル・F-01Jでは大きく改善されました。
F-01Jの電池容量は2850mAhと逆にF-02Hより減っているのですが、電池持ち時間は120時間と伸びています。
さらに次のF-01Kも、同様に120時間越えの電池持ち時間と発表されています。
arrowsエントリーモデルとSIMフリー
arrows Fit/SV/Beはそれぞれ一年ごとに発売されているのですが、その発売に合わせてそれぞれ、arrows M02/M03/M04というSIMフリースマートフォンが各MVNO(格安SIM事業者)より発売されています。いわゆる「格安スマホ」として発売されているわけです。
格安スマホ市場においてarrowsシリーズは、数少ない防水モデルとしてかなりの人気を集めており、まだまだドコモでの販売と比べると規模は小さいものの、着実に実績を上げています。
逆に言えば、ドコモにおいて特にスマホの機能にこだわらないのであれば、比較的安価なarrows Fit/SV/Beは狙い目の機種ともいえるわけです。
特にarrows Be F-05Jにおいては、ドコモの格安プランの目玉である「docomo with(ドコモウィズ)」の対象機種として選定されており、非常に重要なポジションの機種となっています。
arrows Beとdocomo with
2017年夏に開始されたdocomo withの対象機種でもあるarrows Be F-05Jは、注目機種の一つです。
できる限り安く料金を抑えたい人が検討するであろうdocomo withの対象機種であり本体価格もかなり安く抑えてあるものの、全体的のスペックはそれほど高いわけではなく、「安くはしたいが性能にもこだわりたい」というジレンマを抱えやすい機種とも言えます。
どの程度の性能を許容できるかによって選択するべきか否かが変わってきますが、個人的には少なくとも、カメラ重視のユーザーは選択しない方がいいと思います。
docomo withのサービスとしては「docomo with(ドコモウィズ)は本当にお得なのか」
同じくdocomo with対応のGalaxy FeelやAQUOS sense、MONOとの比較としては「arrows BeはGalaxy Feelよりお勧めか」「docomo with対象4機種比較/おすすめスマートフォンはどれか」でそれぞれ検証していますので、気になる方は合わせて確認ください。
安定のフラッグシップモデル・arrows NX F-01K
2017-2018年冬春モデルとして発表された最新のarrowsが、arrows NX F-01Kです。
ますます外観はXperiaに似てきたような気もしますが、arrows Beと比較すると全体的にやや柔らかいフォルムになっているようです。
スペック上は、「NX」を冠するarrowsのフラッグシップモデルなだけあり、非常に高いレベルを維持し、さらに電源ボタンを指でなぞるだけで、Webページや電子書籍、ドキュメントなどの小さい文字を自分にぴったりのサイズに自由自在に調節できる、 新センサー「Exlider」を搭載しています。
生体認証も、今までのように虹彩認証か指紋認証のいずれか、ではなく、その両方を搭載しているという特徴があります。
arrowsの最新機種として、安定の仕上がりとなっています。→「arrows NX F-01Kを購入して色々試してみたまとめ」
発売は12月8日で、ドコモオンラインショップでも販売されています。
arrows Be F-04Kは泡タイプのハンドソープで洗えるスマホ
初代arrows Beに引き続き、docomo with対象機種として2018年夏モデルとして発売されました。
「The・割れにくいスマホ」=「arrows」という路線がそろそろ定着しつつあるようです。
今回はそれに加えて、「泡タイプのハンドソープで洗えるスマホ」という特徴がアピールされています。
どうしても汚れやばい菌が気になるスマホにおいて、常に清潔にしておけるという点は、綺麗好きな方にとっては非常に大きなアドバンテージとなるのではないでしょうか。
懸念項目だったカメラ機能も強化され、安心して選びやすく進化しています。→「ドコモのarrows Be F-04Kに機種変更してみた」
arrowsまとめ
ドコモの老舗メーカーであったパナソニックやNECが相次いで撤退していった中で、SONYやSHARPとともにギリギリの状況の中を形は様々変えながらも生き残ってきた富士通・arrows。
既にドコモにAndroidスマートフォンを提供しているメーカーは数少なく、これ以上撤退が続くとAndroidの選択肢自体がほとんどなくなってしまうという異常事態になってしまいます。
個人的には私もまだまだiPhoneよりもAndroidスマートフォンの方が使いやすいと思っているので、まだまだこれから「The・割れにくいスマホ arrows」の巻き返しには大いに期待したいところです。
直近での夏モデルF-04Kを楽しみながら、2018年今後の展開も楽しみに待ちたいと思います。